成人式と同窓会と(掌編小説)
《ショートショートとAI朗読・AI動画》
「降るわねぇ。この吹雪、今日はマジでやばいと思ったわ」
「だよね。やばかったね。ここまで来るのが大変だったさ」
艶やかな着物を着た女性が、白いスーツ姿の男性と苦笑いし合っていた。私はフードや肩に積もった雪を払いながら、公民館の入口を通り抜け、ホールの《受付》に向かう。
その二人は、2年前に卒業した教え子たちだった。
私が、この町にたった一つしかない高校に着任して、もう8年。生徒数は年々減り、この春に隣町の高校との統合が決まっていた。
県教委が3年前に統廃合の計画を打ち出したときは、あちこちで反対の声が上がった。でも、県立から町立に移管する案も結局、町の予算じゃ維持が難しくて、町議会も諦めムードに。
高校がなくなると、ますます過疎化が進んでしまうのは明らかだった。
「あっ! 先生、超久しぶり! 全然変わってないねー」
「2年しか経ってないのよ。それより雪菜さんが変わりすぎね」
私は笑いながら、薄桃色をベースとした落ち着きのある振袖姿の彼女に声をかけた。高校生の頃は金髪のロングヘアで、生徒指導部長を困らせてばかり。小さな町だから、誰もが「ああ、あの子か」と知っているほど目立った存在だった。
「だって、もう親になったんだよ。そりゃ少しは大人になるでしょ」
「ふふ、確かにね。今、娘さんは?」
「ママに見てもらってる。今日は成人式だし、友達と飲みたくてさ」
無邪気に笑う顔は、あの頃とぜんぜん変わらない。私の授業ではいつも「先生の話、超ウケるんだけどー」と謎に楽しそうだったのを思い出す。
「……私たちの高校、なくなるんだよね」
急に真顔になった彼女が、寂しそうにつぶやく。
「そうね……。この春に私も異動になるし」
この町に唯一の高校だから、成人式そのものが同窓会みたいなものだった。わずか2年、されど2年。教え子たちが大人になって、この場所に戻ってくる姿を見られるのは、いつだって嬉しかった。
二十歳になった卒業生と、ここで会うのはこれで終わる。
春には、もうこの高校も、私も、別の場所へ ──。


